恋時雨~恋、ときどき、涙~

店長
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今、君のそばに、話せて手話もできる人はいますか?
いたら、返事をください。



「誰? 店長って、誰?」


聞いて来る順也と静奈を無視して、わたしは「大丈夫です、居ます」とだけ返信をした。


すると、間もなく、電話がかかって来た。


〈わたし、話せない。出て〉


わたしは何も説明もなしに、ぶしつけに〈早く出て〉と順也に震えるスマホを突き出した。


「えっ、ぼく? ねえ、この、店長って誰?」


〈いいから、出て!〉


「わかったよ……」


あくせくしながらも、順也が電話に出る。


手短に何かを話し終えて、何かを納得したように頷いた順也が、


「真央」


と顔を扇いで来た。


「店長さんが言っている事を、今から訳すから」


と順也は言い、通話をスピーカーに切り替えたようだった。


順也が手話を始めた。


「以前、見せてやると言っておきながら、まだだったから。もう、ずっと昔、高校生だった頃、友人と一緒にビデオに撮ったものを送るから」


電話越しに店長が言っていることを、順也が手話に訳す。


が、それが何の事だか、すぐには分からなかった。


何のこと? 、と静奈に聞かれても、首を傾げるしかない。


「もう十年も前のものだし、ビデオから携帯用に加工したものだから、かなり画質が悪いかもしれないけど」


動く順也の両手を見つめながら、もう一度小首を傾げた。