恋時雨~恋、ときどき、涙~

短い耳のうさぎ 様


おれが、お前の音になる


だから、結婚しないか


返事をきかせて下さい


美岬海岸で待っています



  よわむしのライオンより




メッセージカードを胸に抱きうつむいたわたしの肩を叩いたのは、大きくて優しい手だった。


「それ、ね」


順也が微笑みを浮かべながら、メッセージカードを指さす。


「ぼくが、拾ったんだ。ゴミ箱の中から、あの日、ぼくが拾った」


3年前のあの日、ちょうどわたしの乗る新幹線が発車時刻を迎えた時、駅の改札口に健ちゃんが駆け込んで来たらしい。


「健太さん、汗だくだった。きっと、夢中になって、追いかけて来たんだと思う。真央のこと。真央を引きとめようとしていたんだと思う」


だけど、タッチの差で、新幹線はホームを出た後だったのだ。


その時、幸と中島くんは、順也と車椅子を乗せられるタクシーを拾いに行っていて、その場には居なかった。


「ぼくは、ロータリーに向かおうとしていて、エレベーターを待っていたんだ。だから、健太さんは、ぼくに気づいていなかったんだと思う」


改札口で乱れた呼吸を整えながら電光掲示板が変わるのを、健ちゃんはじっと見上げていたらしい。


そして、東京行きの文字が変わった瞬間。


「健太さん、大きな息を吐いて、うつむいて、顔を上げて、だけど、またうつむいて。しばらく、立ちすくんでいるみたいだった」


順也は開いたエレベーターを無視して健ちゃんの方へ向かおうとしたけれど、やめたのだそうだ。


「健太さんが、泣いていたから」


ざくり、と心臓を槍でひと突きされたように、胸が痛んだ。


「ぼくは、健太さんに声を掛けることができなかった。今、声を掛けちゃいけない、とさえ思った」


順也が、目から涙が落ちる動作の手話をした。


「軒下に雨宿りをした時、屋根から落ちる雨粒のように。うつむく健太さんから落ちる涙が、本当に綺麗だったから」


ぼくは動くこともできなかった、と順也は切なそうに続けた。