恋時雨~恋、ときどき、涙~

その圧迫感に、たまらず息を飲んだ。


「なんで、ぼくには正面からぶつかって来るのに、健太さんにはぶつかって行けないんだよ!」


〈離して!〉


わたしは乱暴に順也の手を振りほどいた。


「今みたいに、全身全霊でぶつかって行けばいいじゃないか!」


全速力で動く順也の両手を、強く叩いた。


〈しつこい! わたしのことは放っておいて!〉


でも、順也は毅然としていて、その表情はひとつも変わらない。


まるで、的を射抜く矢のように、わたしを睨んでくる。


「今、ぼくの手を叩いたように。さっき、ぼくを突き飛ばして、ぶつかって来たように!」


こうして、ぼくに気持ちをぶつけて来たように、と順也がハンドバッグを掴んで振り上げた。


「健太さんに、全力でぶつかってみればいいじゃないか!」


その際に、逆さまになったハンドバッグからひらりと蝶々のように飛び出した紙が、右へ、左へ。


ゆらり、ふわり、と舞い散る木の葉のように芝生に降り立った。


「……え……これ」


次の瞬間、順也がそれを拾い、そして、目を見開いた。


「これって、あの時の」


固まる順也の背後にいた静奈が不思議そうに首を傾げて覗き込む。


静奈も目を丸くして、固まった。


「これって、3年前の……どうして、真央が持ってるの?」


わたしはこぼれる涙を払いながら、


〈返して!〉


むしり取るように、順也からそれを奪い返した。