恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈分かるよ! 分かるけど!〉


でも、分からない。


泣くほかに、どうしたらいいのか、分からない。


だって、そうでしょ。


どんなに願っても、祈っても、望んでも、もう、戻る事はできないでしょ。


過去に、戻れる人なんていないでしょ。


そうだよね、順也。


わたしは、順也の顔の前に3本の指を突き出した。


「……さん?」


順也が同ジェスチャーをしながら、首を傾げた。


〈3年前に、戻りたい〉


3年前に戻って、もう一度、あの日をやり直したい。


〈3年前に戻りたいよ!〉


どうして人は未来に行くことはできるのに、過去に戻ることはできないのだろう。


わたしは行き場のない悔しさを、ブーケに込めて、順也に投げ飛ばした。


「違うだろ、真央」


ブーケをキャッチした順也が、投げ返して来た。


「ぼくに言ってどうするんだよ! 相手が違うだろ!」


返って来たブーケはぼろぼろになっていた。


原型はかろうじてとどめているものの、秋に木の葉が枯れ落ちた紅葉の木のようにすかすかになっていた。


「ぼくじゃなくて、伝えるべきひとに、伝えればいいじゃないか」


青々と茂る芝生に舞い散った花びらたちは、まるでまだらに積もった雪のようだった。


「伝えればいいじゃないか、健太さんに。3年前にもどりたいって、伝えればいいじゃないか!」


順也は簡単に言うけれど、それができていたのなら、こんなに苦労はしていない。


素直な順也には簡単なことなのかもしれないけれど、ひねくれ者のわたしにとっては難しいことなのだ。


〈今更、何をどう伝えろと言うの?〉


「素直に、真央が思っていることを正直に伝えればいいだろ」


〈できない〉


「どうして? ぼくなら、伝えに行くよ」


〈素直で真っ直ぐな順也に、わたしの気持ちは分からない〉


穏やかに戻りかけていた順也の表情が一変した。


「ああ、そうだね! ぼくには、全く分からないよ! 分かりたくもない」


全然分からない! 、と順也が凄まじい勢いでわたしの肩に掴みかかる。