恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈本当は会いたかった。会いたくて、会いたくて、たまらなかった!〉


もちろん、大好きな順也に、静奈に、幸にも。


〈ただ、とにかく会いたかった〉


健ちゃんに会いたくて、毎日、本当に苦しかった。


「真央は……ばかだね」


大ばかだよ、そう、順也の唇が言った。


水平線の向こうから流れ込んでくる茜色の雲の切れ間から、淡い橙色の光が降り注ぐ。


そうだ。


わたしは、大ばかだ。


だけど、今更気づいたところで、もう遅い。


こうなる前に、教えて欲しかった。


〈どうして、教えてくれなかったの?〉


「何を?」


〈どうして、もっと早く、恋がこんなにも辛いものだと、教えてくれなかったの?〉


何も知らずにいた時に、知る事ができていたら。


〈恋が、こんなにも苦しくて切ないものだと分かっていたら〉


わたしは、芝生の一部をむしり取って、順也に浴びせた。


〈わたしは、恋なんてしなかった!〉


健ちゃんを好きにならないように、努力したのに。


「そんな事……そんなふうに言うなんて最低だ!」


わたしは、とっさに目をつむった。


順也がやり返して来たのだ。


芝生をむしり取って、わたしの顔にぶつけてきたのだ。


何をするの、と目を開けて睨んだ先で、順也が興奮していた。


「そんなふうに自分の手で自分の首を絞めて、一体、何になるっていうんだよ」


そんな事、わたしに分かるわけがないじゃないか。


どうしろというのだろう。


ただただ、涙があふれた。


「泣いても、どうにもならない! それくらい、分かるだろ?」


真央なら分かるだろ、と順也が私の肩を掴んで、前後に激しく揺すった。