恋時雨~恋、ときどき、涙~

切り落としたってどうせ、ただの飾り物に過ぎないのだ。


〈世界中から、音が消えたらいいのに!〉


オレンジ色のドレスを気球のように膨らませて、静奈がへたりと座り込んだ。


「真央……」


火花が散りそうなほど睨み合うわたしと順也の横で、綺麗な花嫁が泣いた。


細い細い肩を震わせて、泣いている。


〈わたしは、恋をする事も許されない人間なの? 夢を持ってはいけないの?〉


どうして、わたしの耳は、僅かな音すら拾う事ができないの。


意思とは裏腹に、両手が勝手に動く。


〈いつも、辛かった。本当は〉


こんな事は悔しいから、言いたくないはずなのに。


止まらない。


風を切り裂くように、両手が動く。


〈辛かった。悔しい想いばかりしてきた〉


それでも、順也は動じず、口を真一文字に結んだままわたしの両手を睨んでいた。


〈寂しかった、いつも。隣に順也が居ても、静奈や幸が居ても、わたしはひとりぼっちだった〉


みんなと同じ空間に居るはずなのに、でも、わたしだけみんなと別の空間をうろうろさまよっていた。


孤独でたまらなかった。


〈でも、言えなかった。そんな事、言えなかった〉


言ったら、今度こそ本当に孤独になってしまうような気がしたから。


〈いつも、我慢していた〉


夕日が順也の瞳を、くるくる輝かせる。


〈惨めだった。どうしてわたしだけがこんなに惨めな思いをしなければならないのか、分からなくて〉


いつもひがんでばかりいた。


本当は。


〈そんな自分が嫌いだった。大嫌いだった〉


心は真っ黒なくせに、表では良い顔ばかりしていた自分が、何よりも大嫌いだった。


情けなかった。


素直になりたかった。


強がりで出来ている鎧を脱ぎ捨てて、素直に生きて来れたら、こんなに後悔を背負っていなかったのかもしれない。


3年前に、素直になりたかった。