恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈障害を乗り越えた順也と、乗り越えられなかったわたしは、あまりにも違いすぎる。順也は……〉


順也の顔を指さす。


「真央?」


順也の優しい瞳が夕日を吸収して、寂しげに黒く、くるんと輝いた。


〈順也は、眩しいね〉


眩しくて、遠くに感じるよ、順也が。


この海辺の田舎町で一緒に成長して来て、いちばん近い存在だった順也が、すごく遠くに感じる。


順也を支え続けて、一緒に障害を乗り越えて、幸せを掴んだ静奈も。


心に大きな切ない傷を抱えているのに、いつも明るく前を向いて颯爽と歩く、幸も。


あんなに一緒に過ごしていたはずなのに、すごくすごく遠くに感じるよ。


みんな眩しくて、輝いていて。


いいな、みんな。


唐突に、涙があふれた。


泣き出したわたしに、容赦なく順也が飛びかかって来た。


「何が違うんだよ! 真央!」


その手を振り切ろうとしても、できなかった。


順也はわたしの肩をがっしり掴んで、芝生に押し倒した。


「何がどう違うって言うんだよ! ぼくは、一度も思った事ないよ!」


芝生の草からこうばしい、夕日の匂いがする。


「真央がみんなと違うなんて、思ったことない」


そんなの、うそだ。


そんなのは、綺麗ごとだ。


今度はわたしが飛び起きて、順也を芝生に押し倒した。


〈それは、幸せだから言える事だよ! 順也は幸せだから〉


「そんなの、真央のエゴだ!」


ぐわあっと体を起こし、順也がわたしを芝生に押し倒す。


背中がじりじりした。


「耳が聞こえない事って、そんなに違う事かな」


順也の黒髪に絡みついていた草がはらはらと空を切り、わたしの頬をかすって芝生に返って行った。


「真央がいちばん気にしてるだけじゃないか! ぼくも、しーも、みんな気にしてない! 障害の事、誰よりも気にして否定して、下げずんでいるのは、真央だ!」


順也の指が、わたしを真っ直ぐに突き刺す。