恋時雨~恋、ときどき、涙~

無理もない事だ。


いつも穏やかで優しい順也が、目を吊り上げて興奮しているのだ。


普段おとなしい人間がこうなると、妙な威圧感がある。


順也の視線が、わたしに戻る。


純白のタキシードが、西日を跳ね返している。


「3年前と同じことを繰り返すの? そうやって、勝手に決めつけて、諦めて」


また同じ後悔をするの? 、そう手話をして、順也は苦しそうに表情を歪めた。


だって、しょうがないじゃないか。


だってもう、どうにもならない。


わたしに、どうしろというのだろう。


他でもない健ちゃんが、終わりにすると決めたのだから、もう、可能性も何もなくなってしまったのに。


「この3年間、真央も苦しかったんだと思うよ。だけど、真央より遥かに苦しんで、我慢していた人がいるんだ」


順也の手話は優しいだけではない。


時に、必死に、何かを訴えかけてくる。


「どうして分からないんだよ。何で分からないんだよ、真央」


分からないよ、順也。


わたしだって、この3年間、本当に苦しかったのだ。


必死に、我慢してきた。


忘れたくても、忘れることができなくて。


忘れようともがけばもがくほど、忘れられなくなる一方だった。


〈分からない!〉


「分かってよ!」


わたしに馬乗りになって睨みを落とす順也を、右手で突き飛ばした。


〈どいて!〉


順也は一瞬ぐらりとよろけたけれど、すぐに体勢を直してわたしを睨んだ。


横で、静奈が心配そうにわたしたちを見ていた。


「決して口には出さなかったけど、健太さん、本当はずっと、真央を想い続けていたんだ」


胸が熱くなった。


「ぼくには、分かるんだ。健太さんは、何も言わなかったけど」


言わなかった、か。


でも、それは、言わなかった、のではない。


だって、健ちゃんは……。


〈言いたくても、言えなかったんでしょ!〉


「……え」


わたしの両手を見つめて、順也が悔しそうに表情を歪めた。


わたしは、自分の喉に手を当てた。


〈声、出せなくなったから〉