恋時雨~恋、ときどき、涙~

ブーケを拾って、踵を返したわたしの前にずいっと飛び出して来たのは、静奈だった。


「いいの、それで。今、追いかければ、間に合う。まだ、この敷地内にいる」


真央、と静奈が怖い顔でわたしの肩を掴んだ。


いい。


これで、いいのだと思う。


これが、いちばんいいのだと思う。


〈もう、何も望まない。これでいい〉


わたしは自分に言い聞かせるように頷いて、さりげなく、静奈の手をほどいた。


今度、わたしの腕を掴んで引っ張ったのは、順也だった。


「ぼくは、納得しないよ、許さない、こんな終わりかた」


大きな口だった。


「ぼくは、納得しない!」


次の瞬間、順也は車椅子を立ち、わたしに覆いかぶさって来た。


危ない!


順也を受け止めようとしたけれど、わたしも静奈も順也の大きな体と一緒に芝生に倒れ込んでしまった。


「ねえ! 真央!」


順也がわたしに掴みかかった。


わたしが抵抗する間もなく、


「どうして、そうなんだよ!」


順也が馬乗りになった。


「いつも、いつも、そうなんだよ!」


わたしの顔の前で、順也の両手が乱暴に空を切る。


「またそうやって諦めるの? 我慢するの? ……諦めるの?」


頭に、血が上る。


順也に、何が分かるというの?


わたしは、順也の手を叩いて、睨み付けた。


「順也、やめて、落ち着いて」


今にも取っ組み合いに発展しそうなわたしと順也の間に、静奈が割って入って来た。


「順也! ねえ、真央も。やめてよ」


「しーは黙っていて!」


興奮する順也を見て、静奈が目を丸くして固まった。