恋時雨~恋、ときどき、涙~

でも、静奈は同じポーズのままだ。


代わりに、静奈の唇が動いた。


「何て言えばいいの。何て言えば、真央を傷付けずに済むの」


だって、真央は今でも好きなんでしょ、健太さんのこと。


そう言った静奈の片目から、ひと粒の涙がこぼれ落ちた。


「私には、言えないよ」


健ちゃんが静奈に伝えた事なら、だいたいの予想がつく。


ひまわりの髪飾りを返して来たこと、それを捨ててくれと伝えて来たということは、おそらく、そういう事なのだと思う。


わたしはひまわりの髪飾りを軽く握りしめて、静奈の顔を扇いだ。


〈教えて。大丈夫。健ちゃんは、何て?〉


しばらく躊躇したあと、意を決したように、静奈が両手を動かした。


「もう、終わりにするって。真央に、さようなら、って。伝えてくれって」


そう。


平気。


だいたい、そんな事なのだろうって、分かっていたから。


わたしは無理やり笑顔を作って、静奈に微笑みながら頷いた。


だけど、体が張り裂けて、ちりちりに散って行くような気がした。


「もう、会わないって。本当に終わりにするって、帰って行った」


覚悟はしていた。


一度離した手をもう一度繋ぐのは、簡単な事じゃない。


だけど、少しでも可能性があるなら。


その1パーセントにかけてみようって、思っていたけど。


離れていた3年間は、あまりにも長すぎたみたい。


わたしはもう一度こくりと頷いて、髪飾りをきつくきつく握りしめた。


涙は出なかった。


わたしと健ちゃんの恋は、本当に終わってしまった。


もう、どうにもならないのだと思う。


わたしは大きく息を吸って吐いて、ふたりににっこり笑ってみせた。


〈行こう。パーティーが始まる〉