恋時雨~恋、ときどき、涙~

真央が住んでる世界は、本当に、静かなんだな。


きれいなところに、いるんだな。


おれも、行ってみたいな。


おれが生きてる世界は、賑やかで、ごちゃごちゃしてて、うるさすぎる。


賑やかなのに、つまらない所だんけ。


おれも、真央と同じ世界に住みたい。


「きれいな、夕立に打たれながら。健太、言ったんだ」


あのな、亘。


ライオンは、うさぎに恋をしたんけ。


でもな、そのうさぎ、どっか行った。


愛想尽かされたんだ、ライオンのやつ。


よわむしのライオンだんけ、守り抜く事ができなかった。


だから、うさぎ、逃げてった。


だんけ。


もう、そのライオンのとこに。


「きれいな雨は降らないんだぜ。それが、おれが聞いた、健太のいちばん最近の声なんだ」


それは、どういう意味なのだろう。


健ちゃんのいちばん最近の声、って、どういう事なのだろう。


わたしは小首を傾げた。


「あれから、聞いてないんだ」


亘さんの長い指が、メモ帳に綴られた文字をするするとなぞった。


「3年前の、あの夕立の日から、健太の声、どっかに行っちゃった。その、うさぎさんと同じように。どっかに行っちゃったんだ」


そう言ったあと、


「これ、返すね」


と亘さんはわたしにメモ帳を握らせた。


メモ帳を見る勇気なんて、わたしにはない。


わたしは、何かから逃げるように、じっと亘さんの口元ばかり見つめた。


「おれ、あいつの親友なのにさ。何もしてやれなくて。情けないんだけど、どうする事もできない」


だから、と亘さんは続けた。