恋時雨~恋、ときどき、涙~

ひと目見た瞬間に、それは確信になった。


ひだまりのような人だった。


でも、3年経って再会した彼はブリザードの中岸に押し寄せられた流氷のような、冷たく凍てついた目をしていた。


うつむいたわたしの肩を叩いた亘さんは弱弱しい目で、こう切り出した。


「こんな事、情けないんだけど。親友のおれがこんな事言うのは、情けないんだけど」


もう、どうすればいいのか見当もつかないんだ、と。


「あいつ」


と亘さんは、わたしが書いた文字を指さした。


【あのひとも】


「今、健太がどこに居て、どんな暮らしをしていて、どんな事を考えているのか。分からない」


亘さんが何を言いたいのかが、わたしには分からなかった。


【健ちゃんはこの町で暮らしているんじゃないの?】


違うの? 、と首を傾げると、亘さんはしっかりと頷いた。


「この町に、健太は居ないよ」


【この町を出たの? 県外に出たの?】


亘さんは疲れ切った表情で首を振った。


「そういう意味じゃない」


本当に、意味がわからない。


だって。


健ちゃんはこの町で変わらず生活をしていて、仕事も以前と同じで、それなのにこの町には居ない、と亘さんは言うのだ。


それも、真剣な顔で言うのだ。


始めはまたわたしをからかって、意地悪を言っているのだろうと思った。


でも、その真剣な表情から、冗談ではないのだと思えてくる。


しばらく、沈黙が続いた。


悲しげで、寂しい空気に耐えられなくなり、わたしはボールペンを握った。


【健ちゃんは今どこに居るの?
 どんな町にいるの?】


メモ帳を差し出す。


亘さんが顔を上げた。


「そうだなあ。例えば」


例えば?


例えるような、まるで空想の世界を描いたような町に、健ちゃんが住んでいるとでも?