恋時雨~恋、ときどき、涙~

【ここ 美岬海岸
 ここに流れているおだやかな時間はあの頃のまま】


「あの頃、か……もう、3年も経ったんだね」


亘さんが椅子の背もたれに寄りかかってステンドグラスを見つめたあと、


「君も、変わったね。きれいになった」


とわたしに微笑んだ。


「3年経って、君は、きれいな女性になったね。もう、真央ちゃんなんて呼んだら、失礼なくらい。きれいになったね」


わたしはぶんぶん首を振った。


【わたしは何も変わっていません
 何も】


そうかな、と亘さんは困ったような顔をして、窮屈そうにネクタイを緩めた。


「自分では何も変わっていないつもりでも、他人には変わったように見える。だって、3年も経ってるんだよ。変わらないはずがないよ」


みんな、変わっていくんだよ、きっと。


少しずつ、本当に少しずつ。


誰も気づかないような、動いているのかいないのか、わからないくらいの速度で。


と、亘さんはゆっくり、読み取りやすいように話してくれた。


全く変わらない人なんていないよ、と。


移りゆく景色や巡る季節と同じで、と。


「3年経って、この町も少しだけ、変わった。3年が経って」


一度言葉を詰まらせた亘さんが、吐き出すように言った。


「みんな、それぞれ、変わったよ」


言い終えた亘さんは、今にも窒息しそうな苦しそうな表情だった。


わたしは、メモ帳を差し出した。


【あのひとも】


メモ帳を見た亘さんは一瞬、目を見開いて、背中を丸めた。


「そうかもしれないな。あいつが、いちばん、変わったのかもしれないな」


やっぱり。


それは、聞かなくても分かる気がする。


この町並みより、3度廻った季節より、何よりいちばん変わったのは明らかに、彼だ。


だって、健ちゃんが変わったのは、明確だった。