恋時雨~恋、ときどき、涙~

右の口角を引き上げ、明らかにわざとらしく、爽やかすぎる笑顔を浮かべながら。


「健太のこと、探してたんだろ?」


わたしは、小さく頷いた。


ふうん、と涼しげな笑みを浮かべた亘さんはスーツのポケットに両手を突っ込んで、


「今更、何の用?」


と皮肉な表情でわたしをじろじろと見つめたまま、白い木製の参列者席に浅く腰掛け、


「健太に、何の用?」


今更、と冷酷に繰り返した。


何も言い返す事ができない。


本当に、亘さんの言う通りだ。


今更、何だというのだろう。


唇を噛むわたしに、亘さんはたたみかけるように言った。


「無神経にもほどがあるんじゃないかな」


亘さんの視線が、幾千の針になってわたしの心に突き刺さる。


「時が解決するとでも、思った? 時間が経てば、お互いの傷も癒えて、笑って話せるとでも思った?」


その針はカッターナイフの刃となって、今度はわたしの心を切り刻む。


痛い。痛い。痛い。


わたしは、きつく奥歯を噛んだ。


「考えが、甘いんだよ、君は。世の中、そんな甘くない」


やっぱり、亘さんは苦手だ。


ストレートすぎて、苦手だ。


悪い人ではない事も、その言葉に悪意があるわけではない事も、分かっているのだけれど。


でも、亘さんは、きっと、わたしに一線引いているような気がする。


「健太に、何を言いに来たの?」


3年前から、ずっと。


それは、亘さんがいちばん良く分かっているからなのだ。


健康な人間と障害を持つ人間が恋をするという現実を、いちばん近くで見てきた人なのだから。


亘さんの目つきが少し怖くなって、一歩後ずさりした。