恋時雨~恋、ときどき、涙~

川水が流れの中の小石をよけて通るように、健ちゃんはわたしをするりとかわして、行ってしまった。


振り返る事ができなかった。


わたしはただ、愕然とした。


一体、何をうぬぼれていたのだろう。


うぬぼれて、この町へ来て、ばかみたいだ。


考えなくても、分かる事だったのに。


もう、3年前とは違うんだってことくらい、ちゃんと分かっていたくせに。


わたしは、何を期待していたのだろうか。


3年ぶりだな、元気だったのか。


そう言って、あっけらかんと笑って、健ちゃんはきっとわたしに微笑みかけてくれる。


そんな期待をしていた自分に、ほとほと呆れた。


両手からブーケがすべり落ちて、足元に転がった。


ロイヤルブルーのバージンロードにプルメリアの花びらが一枚散った。


わたし……ここで、何をしているんだろう。


何をしに、ここに来たんだっけ。


その時、ブーケをひょいと拾ったのは、亘さんだった。


「綺麗だよね、これ。静奈ちゃんからもらったんだろ? だめだよ、大切にしないと」


久しぶりだね、と亘さんが微笑む。


わたしは半ば放心状態のままブーケを受け取り、こくりと頷いた。


「で、どうしたの? 忘れ物でもした?」


プルメリアと真っ白なバラ、ブルースターを抱きしめてわたしはふるふると首を振った。


だめだ。


何だか……泣きそうだ。


急に心がすかすかして、さみしくて、悲しくて、すごく孤独になった。


早くここから立ち去りたいはずなのに、足が棒になっていた。


深い深い真っ青な絨毯が、わたしの足を掴んで離さない。


動くに動けずにブーケを抱きしめていると、


「本当は、探しに来た。違う?」


亘さんが意地の悪い顔で聞いてきた。