恋時雨~恋、ときどき、涙~

チャペルに隣接するバンケットはオープンテラスになっていて、美岬海岸を一望できるオーシャンビュー。


パーティーの準備が始まっていた。


中庭も、テラス中、全てを見て回った。


だけど、どこにも居ない。


亘さんの姿も見当たらない。


待合室にも居なかった。


もしかしたら、帰ってしまったのかもしれない。


ブーケを抱きかかえとぼとぼ引き返していると、再びチャペルの正面に出た。


もうすぐ、夕陽がきれいな時間が訪れる。


ついさっきまでいちばん高い場所にあった太陽が、ほんの少し東に傾き始めている。


フラワーシャワーに使用した花びらを履き集め、作業員の人たちが清掃をしていた。


戻ろう。


もしかしたら、控室に戻っているかもしれない。


わたしは、踵を返した。


でも、チャペルの礼拝堂のドアが片側だけ開いている事に気付き、わたしはメモ帳を取り出し、ボールペンを握った。


そして、それを、清掃していた女性に差し出した。


【中に入ってもいいですか?】


「ええ、いいですよ。今日はもう予約入ってないですから。どうぞ」


【ありがとう】


ぺこり、と会釈をして、わたしは礼拝堂に向かった。


真っ白な壁と床、その真ん中を流れるロイヤルブルーのバージンロード。


静奈、きれいだったなあ。


一歩ずつ、ロイヤルブルーの道を進む。


まるで、海面を歩いているような気分だ。


正面から差し込んで来る西日が、パンプスのつま先に当たって眩しい。


わたしは、立ち止まった。


正面のステンドグラスからこぼれ落ちて来る薄いオレンジ色の陽射しが眩しくて、思わず目を細める。


誰……?


祭壇の前に、ふたつのシルエットがあった。


十字架が激しく輝き、礼拝堂に光の粒をまき散らした。