恋時雨~恋、ときどき、涙~

本当に、素直に、わたしは嬉しかった。


わたしの隣には必ず、ふたりが居た。


静奈と順也と一緒に過ごす高校生活が楽しくてたまらなかった。


入学して半年経った頃、静奈と順也に変化が現れた。


ふたりは恋に落ち、交際をスタートさせたのだ。


その事を知った時も、本当に嬉しかった。


ふたりのことが大好きだからこそ、素直に嬉しかった。


高校を卒業後、順也は地元の海岸線沿いのガソリンスタンドに就職した。


わたしと静奈は、地元から車や電車で1時間ほど離れた街にある、短大に進学した。


栄養士の資格をとるためだ。


もともと、料理は得意な方だったし、耳が聴こえなくてもその仕事ならわたしにもできるかもしれないと思ったからだ。


わたしはシートにもたれながら、海岸線沿いの景色を眺めて、潔く諦めることにした。


まあ、いいか。


ついて行くくらいなら。


静奈も順也も居るのだから。


どうせ、誰とも前向きに会話なんてできっこないのだ。


行っても、行かなくても、同じだ。


つづら折りの松林を抜けると、一気に視界が開けた。