恋時雨~恋、ときどき、涙~

丁度、背骨の辺りがぐつぐつと煮えたぎるように熱くなった。


順也が……。


落雷に打たれたように、体が硬直した。


……順也。


幸が、


「口、ぽっかーん、空いとるで」


とわたしの口を手で塞ぎ、可笑しそうに笑った。


気付いた時、わたしは幸のドレスの袖を掴んでいた。


「この日のためにな、うちらには想像もつかんような、壮絶で過酷なリハビリしたんやて。必死にな、努力したんやって」


奇跡だ。


奇跡だよ。


静奈が言っていた「奇跡」は本当の本当で、この事だったんだ。


順也が、奇跡を起こした。


「この奇跡はな、順也くんの努力が起こしたんやで。絶対に、諦めんかった順也くんが」


新郎の介添似人が、一本の丈夫そうな黒い杖を差し出した。


順也がそれを受け取る。


杖が、床を突く。


その杖に体重を乗せて、順也が、すっと立ち上がった。


これは、夢でもなければ幻でもない。


今、そこに立っているのは、順也なのだ。


「歩くことはできんのやって。立つ事が精一杯なんやて。せやけど、これって、凄い事やで。な、真央」


わたしは頷いた。


何度も、何度も、何度も。


頷いた。


祭壇前で、静奈のお父さんが、順也に深々と頭を下げる。


順也も丁寧な会釈を返して、祭壇上から左手を伸べる。


父親から腕を離し、純白の花嫁が祭壇を上がって行った。


そして、順也の手に、右手を重ねた。


真っ直ぐに立つ順也の姿はもう見れないと思っていたのに。


順也。


どんなに、努力したのだろうか。