恋時雨~恋、ときどき、涙~

「あかん! うちら、遅すぎやん」


礼拝堂の座席は、すでに式の始まりを待つ参列者でびっしりと埋まっていた。


わたしと幸は、空いていた最後尾の席に座った。


あたたかな光が射しこむ、午後の礼拝堂。


色彩の美しいステンドグラスが眩いほど、輝いている。


十数メートルほどの、吹き抜けそうな高い天井。


18メートルだと幸が教えてくれた、見るからに神秘的で奥ゆかしい雰囲気を放つ、ロイヤルブルーのバージンロード。


壁も、床も、参列者席も、祭壇も、オルガンも、全て辺り一面真っ白な礼拝堂。


6月14日。


大安、吉日。


午後2時。


本日、快晴。


幸が、前方を指さした。


「いよいよやな」


参列者の視線が、オルガンの方へ向いている。


幸が、鍵盤を奏でるジェスチャーをした。


どうやら、礼拝堂にパイプオルガンの音が響いているらしい。


祭壇の両サイドのシャンデリアに、光が灯った。


祭壇の真上の巨大な十字架が、輝く。


白髭の神父様が、祭壇に立った。


神父様を見つめていると、幸に肩を突かれてハッとした。


「順也くんや。かっこええなあ」


真っ白なタキシードに身を包んだ順也が、緊張の面持ちで車椅子を走らせて入って来た。


順也だ、と思った。


順也が運んで来た空気は、優しさに満ち溢れるやわらかなものだった。


やっぱり、順也だと思った。


順也が祭壇前まで来ると、2人の男性が車椅子を持ち上げ、祭壇の上まで移動させた。


ステンドグラスから差し込む陽射しが、ロイヤルブルーのバージンロードを照らす。


幸が、わたしを小突いた。


「始まるで」


その時、礼拝堂のドアが厳かに開き、午後の陽射しがいくつかの筋になって差し込んだ。


参列者がいっせいに振り向く中、父親に腕を絡めた静奈が入って来た。


6月の花嫁に、夏の陽射しが霧雨のように燦燦と降り注ぐ。


ゆっくり、一歩ずつバージンロードを進む花嫁にすっかり見とれていると、


「奇跡が、起きとるで」


と幸が祭壇を指さした。


……ウソ。


得体の知れない衝動が、胸を突き上げる。