恋時雨~恋、ときどき、涙~

ドアが、ゆっくりと開く。


わたしは、たまらず息を殺した。


眩しくて、清らかで、清潔で、瞬きさえできなかった。


きれい。


それ以外の、それ以上の言葉が見つからなかった。


これ以上に美しい後姿を、わたしは、知らない。


開け放たれた窓から、初夏の爽やかな熱を孕んだ潮風が入って来る。


真っ白なレースが、天女の羽衣のように風になびく。


純白のウエディングドレスに華奢な体を包み込む花嫁は、窓辺に立ち6月の青空を見上げていた。


その後ろ姿があまりにもきれいで、まるでおとぎ話のワンシーンを見ているようだった。


透けたベールのように、静奈もすううっと透けて空に一体化されてしまいそうで。


「静奈」


幸の声が届いたらしい。


静奈が振り向いた。


振り向いて、


「……真央」


わたしの名前を口にして、言葉を詰まらせる。


なんて、きれいな花嫁さんなのだろう。


3年ぶりに再会した静奈は、どこまでもどこまでも、純白だった。


きれいで、近づくことなどできそうもなかった。


きつく奥歯を噛んで、そして、静奈はわたしを睨んだ。


つかつかと、静奈が詰め寄って来た。


「真央。私、許さないんだから!」


静奈が、シルクに包まれた右手を振り上げた。


覚悟はできていた。


3年間も音信不通にして、逃げ続けていたこと。


現実から逃げ続けていたこと。


大好きな静奈を悩ませ続けて来たこと。


殴られても、蹴っ飛ばされても、今日限りで絶交されても、それは仕方のない事だと、覚悟した。


わたしは、殴られるつもりで、歯を食いしばり、目をつむった。