恋時雨~恋、ときどき、涙~

幸がドアノブに手を伸ばした時、


「おっと」


先にドアが開いて、介添人と思われる女性が出て来た。


「わっ! ごめんなさい。大丈夫ですか? ぶつかってないですか?」


淡い桜色のワンピースが良く似合っている。


「ギリギリセーフやで。大丈夫か? 真央」


幸に振られて頷くと、彼女はほっとした様子を見せた次の瞬間、


「……え……真央ちゃん?」


とわたしに顔を近づけて来た。


思わず、飛び付いてしまった。


3年前、短大に通っていた時、よく一緒に行動を共にしていた菜摘だったのだ。


「久しぶりだねー! あ、分かる? 読める? よね?」


と口元を指さして、菜摘がくしゃくしゃの笑顔になった。


「元気だった?」


わたしが頷くと、菜摘は「そっかー」とべらべらとしゃべり始めた。


菜摘の肩に、幸の手がぬーっと伸びて来た。


「想い出に花咲かせんのは後やで。静奈は? 中、居るんやろ?」


ああ、と菜摘が頷く。


「今ちょうど着替え終わったところ。どうぞ」


じゃあ、あとでね、と菜摘は受付に用事があると言って、すたすたと行ってしまった。


「真央」


菜摘の背中を見つめていると、幸が顔を扇いできた。


「なつかしいやろ。菜摘と静奈な、今、同じ職場で働いてんねんて。保育園の栄養士さんやで、ふたりとも」


〈みんな、ちゃんと、前に進んでいるんだね〉


わたしが笑うと、んな辛気臭い顔すんな、と幸が背中を叩いて笑った。


「真央かて、ちゃんと前に進もうとしとるやんか」


開けるで、と幸が再びドアノブに手を伸ばした。


緊張した。