恋時雨~恋、ときどき、涙~

「細かい事気にしとったらハゲるで! 平気や。今更逃げようったって、そうはさせんよ!」


覚悟しいや、とニタリと笑って、幸が飛び付いて来た。


もう、22歳なのに。


こういう無邪気なところも、全開の笑顔も、3年前と変わらない。


幸は、出逢った時から、そういう女の子だった。


泣きたいほどの辛さを胸に抱きしめているのに、明るくて、まっすぐで。


人の心の壁の隙間を探して、するすると入って来て、いつの間にか空気のように寄り添ってくれて。


わたしは、この子に、どんなに救われてきたのだろう。


幸。


ありがとう、幸。


わたしは、全力で絡みついて来る幸の腕を叩いた。


〈分かった。分かったから〉


「ほんまか? せやったら、ええんやけど」


わたしは、今度こそしっかり頷いて、幸の目を見つめ返した。


〈決めたから。もう、逃げないって〉


「そうか」


幸が、わたしの手を握った。


「ほな、行こか」


ペンションを出て5分ほど勾配を上ったところに、セントマリンチャペルはあった。


見下ろす景色は、絶景。


海の巨大パノラマを一望できる。


青空と水平線が、はっきりと別れている。


陽光が水面を金色に輝かせていた。


チャペルを指さして、幸が微笑んでいる。


「鐘が鳴っとる」


澄み切った青空の下、教会の鐘が高らかに鳴り響いているらしい。


「きれいな音やで。真央」


わたしは目を閉じ、大きく深呼吸した。


3年前と同じ香りの潮風が、頬を撫でる。


「こっちやで」


受付を済ませ、幸について行くと、そこは新婦の控室だった。