恋時雨~恋、ときどき、涙~

「少し、早めに行こか」


〈何かあるの?〉


幸が、にっこり微笑む。


「あんな、静奈が、控室で待っとる。式の前にな、真央を連れて来いてうるさくてかなわんねや」


〈わたし?〉


「せやねん。何や、式の前に言いたい事があんねやて。とにかく、連れて来いてうるさいねん」


ぶうぶう、と人差し指で小ぶりな鼻の頭を持ち上げ、「静奈の真似」と幸がブタの真似をする。


「どや、似とるやろ?」


〈全然似てない! 静奈は美人だもん!〉


「そら失礼しました!」


わたしが吹き出すと、


「それや! その笑顔やで、真央」


と幸も笑った。


「3年振りの再会なんやで。笑うて会うんやで」


わたしは頷いた。


「さ、行くで。静奈が待ちくたびれて、干からびてまうわ」


だけど、わたしは幸のドレスの袖を引っ張った。


「どないしたん?」


〈早く、静奈に会いたい。でも、怖い〉


「何が怖いねん」


〈緊張する。怖い。笑って会えるか、分からない〉


苦笑いして肩をすくめたわたしの背中を、


「あほか! 真央は、花嫁さんの親友やんか! せやから、今日、ここに来たんやで」


あほか、とおばちゃんみたいな勢いで本当にど突いてから「ど突くで」と幸が笑う。


ど突かれた背中がしゃんとした。


「他の誰でもない静奈が会いたい、言うてんのやで」


でも、びりびりした。


〈ど突いてから言わないでよ……〉


ふにゃふにゃと力のない手話をしたわたしに、