恋時雨~恋、ときどき、涙~

「すみません。ホットコーヒー、ふたつ」


幸が手を上げると、


「はい。600円になります。ミルクとお砂糖はいかがなさいますか?」


新幹線パーサーの女性は、手慣れた様子でテキパキと耐熱カップにコーヒーを注いだ。


「はい、どうぞ。真央の分。ホットでええやんな?」


〈ありがとう〉


新幹線の中はエアコンが効いていて、少し肌寒いくらいだった。


「ほな、乾杯」


ホットコーヒーで乾杯したあと、一息ついて、幸が言った。


「あんな、真央。もしかしたら、3年前とはちゃうかもしれんけどな」


〈違う? 何が?〉


「……それは」


幸が、小さく首を振った。


「分からん。せやけど、3年ちゅうんは結構長いやんか。いろいろ変わってしもたもんが、あるんとちゃうんかな」


と、幸は意味深な表情を浮かべた。


確かに、変わってしまったものがあるのだろう。


景色や町並が、あの頃のまままったく変わっていない方がおかしい。


3年も経っているのだから。


それは分かっているし、覚悟はしている。


うん、と頷くわたしに、幸が続けた。


「せやけどな。受け止めたってな。全部、受け止めたって。な、真央」


何を、と聞いても、幸は「分からん」「いろいろや」そう言うだけで、何も語ろうとはしなかった。


何も。


ただひとつ、笑顔で教えてくれたのは、式場の事だった。


「すごいんやで。めっちゃきれいなんやで。チャペルなんか、最高や」


以前、あの町に居た頃、静奈と覗きに行った事があるのだそうだ。


「フランス郊外にありそうな造りでなあ」


〈フランス、行った事あるの?〉


「あるわけないやん! 想像や、想像!」


わたしは笑ってしまった。


〈適当な事ばっかり言うんだから〉


細かい事は気にしたらあかんで、と幸が笑い飛ばす。


「せやけどな、ほんまにきれいやねん! バージンロードがな、真っ青やねん」


ロイヤルブルー、いうねんて、と幸は楽しそうに両手を動かし続けていた。