恋時雨~恋、ときどき、涙~

今ではもうすっかり短くなった。


落ち着いた焦げ茶色のボブヘアーがとても良く似合っている。


メイクも薄くなって、清楚な女優さんみたいだ。


〈何を、思ったの?〉


わたしは、人差し指を左右に振って、小首を傾げた。


「ほんまに、不思議やな。人の心っちゅうもんは、不思議なもんやな、思うてな」


幸は言った。


どんだけ時間が経ってしもても、どんだけ遠くに居っても。


変わらん「想い」っちゅうもんが、この世のはあんねんな。


幸の、細い両腕が、言った。


建物とか、景色とか、風景は変わってまうもんやし、生活かて生きとったら変化すんのにな。


お天とさんかて気分屋で、天気なんかころっころ変わるやん。


朝は晴れとっても、昼には雨が降ったりな。


人の心もそんなもんやと思うとった。


すぐに変わるし、変えられるもんやと思うとった。


「せやけど、ちゃうねんなあ。変わらん想いっちゅうもんが、この世にはあったんやなあ」


ぬくい世の中やんな、幸の手話に胸がいっぱいになった。


新幹線は大宮駅に停まり、そして、北上を続けた。


「こんなしょうもない世の中、そう思うとったけど。まだまだ、捨てたらあかんぬくい世の中よなあ」


〈そうだね〉


この世界が温かいというのなら、それはまるで、幸だ。


幸は、ぬくいぬくい、女の子だ。


「人の感情ほど、すごいもんはないで。真央」


せやけどな、と言葉を詰まらせる、幸。


その時、新幹線パーサーの女性が狭い通路をカートを押して向かって来るのが見えた。


「あっ、せや。コーヒー飲まん? 今日は特別やで」


と話をはぐらかした幸は、明らかに様子がおかしかった。


「うちのおごりや。どや」


何かを知っているのに、そして、それを言いたくてたまらないのに、わざと言わないようにしている。


そういうふうに、幸は見えた。