恋時雨~恋、ときどき、涙~

「そうじゃない? 真央」


後悔に、後悔を重ねるより……。


わたしは、頷いた。


〈あの町へ、行って来る〉


もう、遅い事くらい、分かっているけれど。


それでも、伝えたい事があるの。


わたし、耳が聞こえない。


声を出すこともできない。


だけど、伝えたい事が……伝えたいひとが、あの町にいるの。


この両手で、伝えたい想いが、わたしにはあるの。


けれど、やっぱり、3年という歳月は長すぎたのかもしれない。


3年間という年月は、わたしに、衝撃的な現実を突き付けてきたのだ。


それから半月後。


6月になり、予定の日よりも1週間早い日に、店長は北海道へ帰って行った。


「人魚姫の本当の結末は、君が作って」


透明な笑顔で、そう言い残して。


それは、小雨が降りしきる、そろそろ飛鳥山の紫陽花が満開になりそうな、雨の季節の始まりの朝だった。











そして、6月14日。


雨の季節も休息日の、とても良く晴れ渡った、休日。


朝一番の新幹線に、幸と一緒に乗り込んだ。


上野駅のホームを、新幹線は緩やかに加速して行った。


右を見ても、左を見ても、高層ビルが建ち並ぶ、東京、上野の街。


車窓から見上げた上空は雲ひとつなく、抜けるような青空が広がっている。


上野を出て、大宮駅に到着しそうな頃、幸がわたしの顔を扇いだ。


「なあ、真央」


今日の幸は、女優さんみたいにきれい。


首元に輝くおほしさまのネックレスが、幸をますますきれいにしている。


「今回の事で、うち、ほんまに思うんよ」


3年前はわたしと変わらないくらい長かった、幸の髪の毛。