恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈わたしに、ふたりを祝福する資格はない〉


わたしは、ふたりに、ひどい事をしてしまった。


こんなにもわたしを思ってくれていたというのに。


いつも隣に寄り添って、耳になってくれたふたりに、失礼では済まされないような事をしてしまった。


それなのに、のこのこと帰るなんてこと、できない。


合わせる顔なんてないのだ。


ふたりの優しさを切り捨てるように、自ら連絡を途絶えさせてしまった。


できれば……できる事なら、幸にも会いたくなかった。


3年前のわたしを知る人すべてに、会いたくなかった。


わたしは、震える両手に言い聞かせるように、幸に言った。


〈できることなら、もう、幸にも会いたくない〉


わたしはもう、あの頃のわたしではない。


わたしは、3年前を忘れてしまった。


……捨ててしまった。


ごめん、と頭を下げようとした、その時だった。


突然、火山が噴火するかのように、幸が豹変した。


「どんだけアホなんよ!」


ギリギリと奥歯を噛む幸がずんずん詰め寄って来て、


「そうやって、逃げるんか! また、逃げるんか!」


目を吊り上げ、わたしの肩に掴みかかって来た。


掴まれた両肩に、鈍痛が走る。


痛い!


顔が歪んだ。


幸はまるで、般若のお面のような恐ろしい顔をしていた。


「また、3年前と同じか! 逃げるんか!」


悔しくて、悔しくて。


それよりも、自分が情けなくて、


〈逃げたんじゃない! そうするしかなかっただけ!〉


怒鳴り散らすように乱暴な手話をして、幸の両腕を力ずくで振り払った。


「逃げただけやないか! 突然、東京に行ってもうて、連絡もとれんくなって!」


違う!


違う! 違う!