恋時雨~恋、ときどき、涙~

眩しくて、わたしは目を細めた。


「うちな、忘れられん人がおんねや」


そう言って、幸はいとおしそうに首元に光るお星さまのネックレスに触れた。


「その人な、うちのこと“おほしさまや”、言うてくれたんやで。分かるやんな?」


わたしはこくりと頷いた。


幸が、幸せそうに微笑む。


「旬の事は好きやったよ。せやけど、なんぼしても、忘れることができんかってん」


忘れようとすればするほど、忘れる事ができなかった。


そう言った幸の両手は、なんだか泣いているように見えた。


「真央には、うちと同じ事して欲しないねん」


幸の両手と、綺麗な瞳を見た時、心臓を矢で射ぬかれたような気がした。


「同じ思いさせたないねん」


幸は、出逢った頃からそうだった。


ずばずば、思った事を言う。


さっぱりしていて、さばさばしていて、真っ直ぐ、思いを両手や表情でぶつけて来る。


「真央がな、ほんまにあの人を想うとるんやったら、何も言わんし応援する」


せやけどな、と幸はきっぱりと言い切った。


「中途半端な気持ちなんやったとしたら、うちは真っ向から反対や。応援できん」


幸の言っている事は、もっともな事だった。


だけど、わたしは何も反応する事ができなかった。


「あ、ちょっとごめんな」


その時、幸に電話がかかってきたみたいだった。


手短に話を終えた幸は、


「職場の友達からやった」


と顔の前で両手を合わせた。


「ごめんな。待ち合わせしとったんやった。これから仕事やねん。遅刻してまう」


わたしは、ふるふると首を振った。


窓の外に視線を飛ばすと、雨は弱まり始めていて、西の空が明るくなっていた。


立ち上がった幸がハッと何かを思い出したように、鞄に片手を突っ込んだ。