恋時雨~恋、ときどき、涙~

「今更こんなんあるか、て。せやけど、うちにはすぐに分かったで。間違いない、思うた」


こればっかりは、説明しようがない事だと思った。


出逢う時には、出逢ってしまう。


何年経っていても、どんなに時間が過ぎてしまった後でも。


会ってしまう時は、会ってしまう。


もう、会えないと思っていても。


もう、会いたくないと思っていても。


もう、会わないと心に決めていたとしても。


出逢ってしまう人には、どこかで必ず、出逢ってしまうものなのだ。


必然的に、そのタイミングで。


「コンビニから、ずっと、真央の事つけてきたんやで」


順也でも静奈でもなく、他の誰でもない。


わたしの場合、その人は幸だったのだ。


「そうかあ。ここで働いとったんか」


ええ雰囲気やん、と幸が店内をぐるりと見渡して、にっこり微笑む。


幸の笑顔は、3年前とひとつも変わっていなかった。


「どうぞ」


店長が淹れたてのコーヒーをわたしと幸に出してくれた。


「おおきに」


こくりと頷いて、オープンキッチンの中に戻って行った店長を指さして、幸は口には出さず、両手だけを動かした。


「無愛想。何、あれ。怒ってる?」


まるでひそひそ話でもするかのような手話に、わたしは笑ってしまった。


わたしはふるふると首を振った。


〈違う。いつもあんな感じ。怒っているわけじゃない〉


ふうん、と幸は店長を見て、勿体無いやん、と溜息を落とした。


「さわやかで、イケメンやのに。あんな仏頂面してたらモテへんやん。もったいないで、って言うてやり、真央」


客が怖がるで、と幸はコーヒーを飲んだ。


〈わたしも、そう思う〉


「なっ! せやろ」


幸と笑いながら店長を見ていると、視線を感じたのか、店長が振り向いた。