恋時雨~恋、ときどき、涙~

健ちゃんが眉間にしわを寄せ集めて、わたしを見つめた。


「何、そんなに我慢してるんけ」


我慢?


わたしは、健ちゃんの手をぶっきらぼうに振り払った。


わたしは、何も、我慢なんかしていない。


例え、何かを我慢しているのだとしても、今はわたしよりも静奈を気にかけてやるべきなのだ。


わたしは、健ちゃんを軽く突き飛ばして、待合室に戻ることにした。


でも、健ちゃんはそれを止めた。


「真央、苦しそうだんけ。何で、泣くの我慢してる? ほら、泣け」


わたしはぽかんとして、健ちゃんを見つめた。


「順也の言ってた通りだんけ」


健ちゃんは、八重歯を見せて笑った。


「真央は、負けず嫌いなんだな」


もし、今、ここで笑っているのが他の人だったら、わたしは間違いなく睨んでいるのだろう。


いや、突き飛ばすかもしれない。