恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしが何かをしようとすれば、必ず、大きな壁が目の前に立ちはだかる。


うまくいきかけると、いつも、目の前を何かでふさがれてしまう。


わたしの前に続いているはずの道はいつだって唐突に、ふたつに、みっつに、枝分かれしてしてしまうのだ。


5月17日。


朝食を終えて、お父さんが出勤して行ったあと、お母さんが聞いてきた。


「ねえ、真央」


〈何?〉


「いつまで、武塙さんを待たせるの?」


あの告白の日から、2か月が経っていた。


「あまり待たせるのは失礼だと思う」


分かっている。


2ヶ月だらだらと引き伸ばしていたわけではない。


本当に、真剣に考えていたら2ヶ月が過ぎていたのだ。


〈今日、返事をするつもり〉


真剣に気持ちを伝えて来てくれた彼に失礼のないよう、わたしなりに真剣に悩んで出した気持ちを伝えよう。


ところが、そう決意した矢先の出来事だった。


そして、その出来事と同時にやってきたのは、彼女との再会だったのだ。


わたしに、新たな決断が迫っていた。








キッチン・タケハナは午前11時に開店する。


定休日は、週の真ん中の水曜日。


買い出しや仕込があるため、店長は8時には厨房に入る。


見習いのわたしは10時に厨房に入る。


青空の下、キッチン・タケハナの前に立ち、わたしは首を傾げた。


開店1時間前だというのに、ドアには鍵がかかっていた。


窓から店内を覗いてみたけれど、どこにも店長の姿がないのだ。


おかしいな。


いつもなら、厨房には真っ白な制服を身にまとった店長の姿があるのに。


こんな事は初めてで、変な胸騒ぎがした。


わたしは、合鍵でドアを開けて中に入った。