恋時雨~恋、ときどき、涙~

大きな目、だけど、痩せこけたしわしわの顔。


真っ黒で印象的な瞳が、じっとわたしを見つめて来る。


「うんうん。秀一の目に狂いはねえ」


え? 、と首を傾げてみせると、おばあさんはにこにこ微笑んだ。


「あんたは苦労してきたんだろうなあ。しんどかったんだべねえ」


なぜだか分からないけれど、すごく、泣きそうになった。


「んだけど、きれいな目をしてる。なまらべっぴんさんだ」


おばあさんは、反対などしなかった。


「こんだらべっぴんさんは、初めて見たなあ。なあ、秀一よう」


「さあ、どうだべね」


とぶっきらぼうに席を立って厨房に入って行った店長を見て、おばあさんがにたにた笑った。


「なんだ。ばがでねえか。体はでっけえのに、まだまだ子供だな。なあに、照れてんだあ。とっちゃん坊やだな」


な、真央さん、とおばあさんがしわしわの顔を近づけて来る。


「うるせなあ。おれは子供でねえ。もうニジュウハチだ」


むっとした顔の店長が、テーブルにコーヒーを出してまた厨房に戻って行った。


わたしとおばあさんは、同時に吹き出した。


おばあさんは、言った。


あいつは無愛想だけど、本当は優しい子なんだよ。


どうか、愛想尽かさないでやって、と、応援する、と言ってくれたのだ。


端から反対されるとばかり構えていたから、わたしは拍子抜けしてしまった。


【わたし、耳が聞こえないのに?】


メモ帳を見たおばあさんは「だから何だ」と笑い飛ばした。


「真央さん。あんたは幸せになれる」


そうなのだろうか。


わたしは素直に頷く事などできなかった。


だけど、そんなわたしにお構いなしにおばあさんは続けた。


「年寄りの言うことは素直に聞け。あんたらより長く生きてるババが言ってるんだ。本当だ」


嘘なばつかねえ、そう言って、わたしの手を取ったしわしわの両手は、ホッカイロみたいにほかほかしていた。