恋時雨~恋、ときどき、涙~

【手紙 返してください
 軽率でした
 もう一度 真剣に考えたい】


「……と、いう事は。これにはやっぱり絶望的な返事が」


ポケットに手を突っ込んで手紙を取り出した店長は、


「いや、覚悟はしていたんだ。けど、そうか……そうか」


叱られた子犬のように、しゅううっと小さくなった。


「恋人が、いるのか?」


わたしは、首を振って否定した。


「なら、好きな人が」


最後まで唇を読まずに、わたしはとっさに目を反らした。


答えたくなかった。


……違う。


過去を掘り起こされることが、怖かったのだ。



前夜、わたしは、手紙にこんな返事を書いた。



――――――――――――――
わたしには、かつて、ひだまりのような恋人がいました。

でも、別れなければいけませんでした。

彼の幸せを願うなら当然の事でした。

もう、誰にも迷惑をかけたくありません。

好きだと言ってもらえた事はとても嬉しかったです。

だけど、お付き合いする事はできません。

ごめんなさい。

――――――――――――――


だけど、今、わたしの中で確かに何かが動き出した気がした。


顔を上げると、店長と目が合った。


先に反らしたのは、店長だった。


わたしは、店長からまだ未開封の手紙を奪い、


「あっ! 何をするんだ」


それを、ふたつに裂いた。


「お前……何も裂かなくても」


細い一重まぶたの目を大きく見開かせた店長に、わたしはメモ帳を突き出した。


【今度は真剣に考えます
 時間をください】