恋時雨~恋、ときどき、涙~

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真央 へ
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見送りには行きません。
泣いてしまうから。

真央が大好きだから。

真央が大切だから。
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ぽとり、と透明な滴がひと粒、桜色の便箋に落ちる。


わたしは大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出した。


鼻のずっと奥がつーんとした。




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真央の気持ちを分かってあげられず、ごめんなさい。

でも、相当の覚悟の上で東京へ行く事は分かっています。

大好きなのに何もしてあげられず、ごめんなさい。

ただ、真央に拍手を送ります。

相当の覚悟を持った事。

私には想像のつかない勇気を出した、親友に。

拍手を送ります。

だから、乗り越えて下さい。
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もう、読めなくなりそうなくらい、涙で文字が霞んでいた。


あふれて、あふれて、あふれて。


そのうち、この涙で、ここが湖になるんじゃないかと思う。




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もう、ここに真央がいないと思うとつらいです。

それ以上にさみしいです。

だって、真央が大好きだから。

さみしいです。

元気でね。

真央は私の生涯唯一の親友です。


       静奈
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どうすればいいのか、どうしたいのか、分からなくなった。


ただ、分かった事は、自分が思っていた以上に、わたしは静奈が大好きだったという事。


桜色の便箋は、わたしの涙でふにゃふにゃになっていた。