恋時雨~恋、ときどき、涙~

「おもしろいふたりだね」


うん。


わたしは頷いた。


そんなわたしに、中島くんは小さめの紙袋を突き出して笑った。


「これ、持って行きなよ」


何だろう。


首を傾げたわたしに、中島くんは大きな大きな口で笑った。


「おれの家の、自家製かまぼこ。最高にうまいんだ」


おすすめの食べ方は、わさび醤油に付けて食べる、だそうだ。


〈ありがとう〉


手話をして微笑むと、中島くんは額に滲む汗を輝かせながら、


「ごめん。未だに手話が分からないような友達で」


とはにかんだ。


「あと、こんな物しか持たせてあげられなくて、ごめんね」


唇を読んで、わたしは首を振った。


「おれ、真央と調理実習してる時間が、いちばん楽しかったよ。いつも、味付けでもめてばかりだったけどね。真央とやり合うの、すごく楽しかった」


わたしも。


最初はとっつきにくそうな人だと思っていたけど、実際はそんな事、これっぽっちもなかった。


人より少し照れ屋なだけで、とても人思いの、初めての男の友達だった。


「何やの。うちの分はないんか? 真央にだけかいな」


ケチやん、と幸が中島くんの脇腹をど突く。


「えっ、幸も欲しかったの?」


「何や、欲しかったの、て。何も言わんと、くれんのが男やんか」


「でも、この前聞いたら要らないって言ったじゃないか」


「はあ? んな事言うた覚えないで! 耳おかしいんとちゃうか?」


「分かったよ……あとで幸にもやるから」


ふたりの息は日に日にぴったりになっている気がする。