恋時雨~恋、ときどき、涙~

駅に着くと、中央改札前に居たのは、幸と順也だった。


新幹線の発車時刻を教えたのは、幸にだけだ。


おそらく、幸が静奈に教えて、順也に伝わったのだろう。


だけど、そこに、静奈の姿はなかった。


〈来てくれたの?〉


額に滲む汗をぬぐいながらふたりに近づいて行くと、幸はにっこり微笑んで、聞いてきた。


「ほんで、彼氏とちゃんとさよならして来たんか? 逃げて来たんとちゃうやろな? 話合うて来たんよな?」


うん。


わたしが頷くと、幸は小さく頷き返して来た。


「せやったら、ええのやけど。お互いに、納得してない別れだけは、うちは許さんよ」


幸の目は、反らしたくなるくらいに真っ直ぐだった。


〈ちゃんと、話し合った〉


「ほんま? 嘘やったら、しばくで」


〈嘘じゃない〉


少しの間があって、幸がしぶしぶ頷いた。


「せやったら、真央を信じることにするわ」


わたしは順也を見つめた。


順也が少し申し訳なさそうに、微笑む。


「ごめんね。しーのこと、誘ったんだけど……」


わたしは首を振った。


いいの。


これで良かったんだよ、きっと。


うつむいたわたしの手の甲を、順也が優しく叩いた。


「でもね、真央。しー、本当は来たくてたまらなかったんだと思う」


そして、順也が車椅子の背中から出したのは、


「これ、真央に渡してくれって。しーが」


桜の花びらがまんべんなく散りばめられた柄の、一通の封書だった。


「手紙。預かって来たんだ」


新幹線の中で読んで、そう手話をした順也は、その手紙をわたしの鞄に押し込んだ。


「しーのやつ、強がってるだけなんだよ。分かってあげてくれないかな」


わたしはうなずいた。


大丈夫。


ちゃんと、分かっている。