恋時雨~恋、ときどき、涙~

いつもみたいに、雨が降っていたら、こんな終わり方じゃなかったかもしれない。


何で、あんなにあっけない終わり方をしたまま部屋を出て来てしまったんだろう。


ありがとうくらいちゃんと残してくれば良かった。


じゃあ。


まるでまた夕方になれば会えるような、簡単な別れ方だった。


そんなのだから、いつまでもこうして諦めがつかないのかもしれない。


まだまだ、たくさん、伝えたい事は山ほどあったのに。


この両手に抱えきれないほど、あるのに。


悔しくて、情けなくて、涙が込み上げてくる。


揺れる葉から降り注ぐ光のシャワーを浴びながら、わたしは必死に涙を飲み込んだ。


初夏の風が、枝を大きく揺らす。


きめ細やかな光のシャワーが、四方八方からわたしに降る。


眩さに目がくらむ。


一枚、二枚……と木の葉が空を切りながら落ちて来る。


肩をぽんと叩かれ、ハッとした。


ま、お。


まるで、木の葉に呼ばれたような気分だった。


風がやまない。


六月の風が、前からわたしをあおる。


木の葉は次々と舞い降りて来て、わたしにまとわりつくように風に舞ったかと思うと、次の瞬間、今度はあっさりとアスファルトに降り立った。


ま、お。


風がぴたりとやんだ瞬間、わたしは振り返った。


息が止まる。


今しがた枝から切り離れた二枚の木の葉が、はらり、はらり、と舞い降りる向こうに立っていたのは、健ちゃんだった。


なぜ?


なぜ、ここに?


目を見開くわたしに、健ちゃんは険しい顔でぶっきらぼうに両手を動かした。


「違うんけな! 勘違いするな! 別に追いかけて来たわけじゃねんけ!」


もう一枚、木の葉が空を切りながら、わたしのつま先にかすりながら、アスファルトに落ちた。


「引き止める気もねんけ!」


わたしは鞄を強く握りしめた。