恋時雨~恋、ときどき、涙~

こぼれてしまわないように、天井を見上げた。


もっと、簡単で単純な性格だったら良かった。


今更後悔したところで、もう、後の祭りだった。


止めようにも、ダムが決壊したように、一気にあふれてしまった。


「何で……泣くんだよ、真央」


健ちゃんが、わたしの顔を扇ぐ。


「しっかりしろ、真央。負けるなよ」


それだけ言った健ちゃんは、時間が来るまでずっと、ひたすら動き回ってばかりいた。


まるで、現実から目を反らすように。


朝食を終えるとすぐに後片付け。


出勤の準備。


洗濯を回して、リビングの掃除。


いつもは、わたしの仕事なのに、健ちゃんがやる事なんて今まで一度もなかったのに。


わたしはその間ずっとソファーに座ってただぼんやりと健ちゃんの背中を目で追いかけ続けた。


悲しかった。


一度も健ちゃんと目が合わなかった事が、何よりも悲しかった。


洗濯かごに山盛りに服を詰め込んで、健ちゃんがベランダに出て行った。


優しくて清潔な洗剤の香りがした。


時間はすぐにやってきた。


もう、行かなければならない。


ベランダを見ると、健ちゃんは馴れない手つきで洗濯物を干していた。


果てなく広がる、青い空。


今日は本当にいい天気だ。


空は青く、流れる雲は白い。


清潔な朝のそよぐ風。


皮肉なものだと思った。


わたしたちに何かが起きる時は、必ずと言っていいほど、雨が降った。


けれど、今日に限って、降らないなんて。


別れの日だっていうのに、雨の気配すら感じない。