恋時雨~恋、ときどき、涙~

「やっと、笑ったな、真央」


〈だって、すごい食欲。お腹壊す〉


わたしが笑うと、健ちゃんは壁時計をちらりと確認して、小さく微笑んだ。


少し、寂しそうに。


「実は、無理したんけ。でも、こうでもして勢いつけないと……なんか……勇気が出そうになくて」


勇気?


ちょっと待ってろよ、そう言って健ちゃんは立ち上がり、キッチンへ向かった。


戻って来た健ちゃんは、手にわたしのお弁当を入れるランチバッグを持っていた。


「これ」


それをわたしに持たせて、健ちゃんはくすぐったそうに笑った。


「そんなもんで悪いけど」


なんだろう。


お弁当箱ではなさそうだ。


ずっしりと重くて、じんわりとぬくもりがあった。


〈これ、何?〉


わたしが首を傾げると、健ちゃんは照れくさそうに両手を動かした。


「生まれて初めて作ったから、激マズかもしれねんけ。おむすび」


わたしはランチバッグの中をそっと覗き込んだ。


アルミホイルで包まれている、いびつな形のおむすびがふたつ入っていた。


わたしは顔を上げて、健ちゃんを見つめた。


「東京まで、道中長いからな。腹も減るだろ」


胸が……締め付けられる。


苦しい。


健ちゃんがやわらかく微笑んだ。


「新幹線の中で食え」


胸が熱くて、息ができない。