恋時雨~恋、ときどき、涙~

「あ、め」


亘さんの薄い形のいい唇が、言った。


あめ。


雨。


「真央ちゃんと健太に何かある時は、いつも、雨が降るんだろ?」


雨。


「あいつ……健太。そんなこと言ってたよ」


わたしはハッとした。


唇が、小刻みに震える。


健ちゃんへの「好き」が体の底からこんこんと溢れてくる。


とめどなく溢れて、一気にこぼれた。


【優しい時雨のように 永遠に約束された愛】


そのリングはホワイトシルバーで。


まるで、雨のひと雫のような形のダイヤモンドがさりげなく輝く、華奢なデザインだった。


「今日ね。飲んでる時、健太が言ったんだ」


そう言って、亘さんは紙にボールペンを走らせた。



【真央は、いつも雨を連れてくる
 真央はおれに優しい雨を降らせる
 その雨は音がない

 静かでさみしくて
 でも
 やたらと恋しくて

 真央は音のない世界はたいくつだって言ってた
 けどな
 音のない世界はたぶん綺麗なんじゃないかと思う】



「……真央ちゃん?」


わたしは、亘さんの手を強く掴んでいた。


もういい。


もうやめてください。


これ以上はもう……。


亘さんがボールペンを置いた。


「泣いてるの?」


もう……やめてください。


これ以上、健ちゃんの気持ちを知るのが怖い。


決心がにぶる。


「真央ちゃん、これ」


ぐっと奥歯を噛んで泣くわたしに、亘さんがハンカチを差し出してきた。