恋時雨~恋、ときどき、涙~

「健太が、この紙持って家に乗り込んできた」


『おれ、結婚する』


「何言ってんだよ。まだ22だろって、そんな金あんのかよって。おれ、バカにしたんだ」


だって、32万もするんだ。


そう言って、亘さんは紙を指差した。


その、横に並ぶ6つの数字を見て、わたしは目を大きくした。


【322,000】


触ったことも、見たことすらない金額。


わたしにはとんでもない金額だった。


「でも、どうしてもこのリングじゃないとダメなんだって。あいつさ」


亘さんがわたしの肩越しに、寝室のドアを見つめた。


「健太が言ったんだ」


『こんな偶然、あると思うか?』


『これはもう運命だんけ!』


『おれ、結婚する! プロポーズする! 決めた!』


「……って」


と、亘さんはそっとそのリングを指差した。


「これ。どうしても、このリングじゃないとダメなんだってさ」


亘さんが、そのローマ字を人差し指でゆっくりなぞった。


わたしは息を飲んだ。


【Eternal Rain】


その下に、まるでサブタイトルのように綴られてある日本語に、目の奥が熱くなる。


【優しい時雨のように 永遠に約束された愛】


しぐれ……。


亘さんが、わたしの肩をひとつだけ叩いた。


こみ上げる感情を必死にこらえて、顔を上げる。