恋時雨~恋、ときどき、涙~

「ずっと、待っていたんだね。健太のこと」


テーブルの上に並んでいるサラダやお皿やスプーンを見つめて、亘さんはふうと息を吐いた。


わたしは頷いた。


テーブルに、空になったグラスを静かに置いて、亘さんは眼鏡を人差し指で押し上げた。


「明日、発つんだってね」


ゆっくり動く唇を、わたしはじっと見つめた。


「真央ちゃん、東京に行くんだろ? 明日」


わたしは頷いた。


健ちゃん、亘さんに話したんだ……。


「そっか。うん……そっか」


亘さんはうつむいてしまった。


でも、すぐに顔を上げてわたしを見つめてくる。


「困ったね。何でだろう。本当に、困った」


眉間にしわを寄せ集める亘さんに、わたしは首を傾げてみせた。


「真央ちゃんも果江も、頭が悪い。悪すぎるよね、本当に」


わたしも、果江さんも……?


「なんだって、自分から健太を突き放すんだよ。真央ちゃんも、果江も」


亘さんも、相当お酒を飲んだのだと分かる。


いつもキリリとしているのに、今にもとろけそうなとろんとした目をしていた。


あぐらをかきながら、前に後ろにぐらりと揺れて、亘さんは続けた。


「アメリカに行くのはけっこう。東京へ行くのもけっこう。でも、なんだって別れなきゃいけないのか……おれには全く理解できないな」


とろんとした目で、亘さんがわたしを睨む。