恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈真央は、って〉


すぼめた両手のひらを前後に合わせる。


つぼみ、という意味だ。


そして、そのつぼみが開くように、手首を中心にぐるりと回しながら指を開く手話をして、笑顔を作った。


〈ひまわりみたいに、元気に笑うって。健ちゃん、言ってくれたよね?〉


ああ、とくすぐったそうに笑って、健ちゃんは頷いた。


「言ったなあ。恥ずかしんけ」


恥ずかしいことじゃないよ。


だって、あの時、わたしは気が狂うほど、嬉しくてたまらなかった。


ねえ、健ちゃん。


〈わたし、今も、あの時みたいに、笑えているのかな?〉


「どういうこと?」


ひとつ、健ちゃんの顔から笑顔が消えた。


健ちゃんは呆れたとでも言いたげに、ため息を落とす。


「笑ってるんけ。ちゃんと、笑ってる」


健ちゃんが立ち上がる。


大きな手が伸びてくる。


「真央」


健ちゃんはわたしの前髪を掻き分けて、あの夏の夜と同じように髪飾りをつけてくれた。


「急にどうした。何でそんなこと聞くんだよ」


真央はちゃんと笑ってるよ、そう言って、健ちゃんは静かに顔を近づけてきた。


唇が重なる直前に、わたしは健ちゃんの胸を両手で押した。


良かった。


わたし、ちゃんと笑えていたんだね。