恋時雨~恋、ときどき、涙~

肩までの真っ黒な髪の毛。


まるで人の心を読む力を持っているような、深い真っ黒な瞳。


いつも凛としていて。


「美雪は、荒れ地に咲く、一輪の白いバラみたいな女の子だった」


会ったことはないけれど、その岡本美雪さんは、健ちゃんのお母さんの両手が言うように、とても美しい女性だったのだと思った。


「美雪は、とても不思議な女の子だった」


〈不思議?〉


わたしが訊くと、健ちゃんのお母さんは頷いた。


「見る人すべてを惹きつける何かを、美雪は持っていた」


それが何なのかは今でも分からないけど、と健ちゃんのお母さんが肩をすくめる。


「高校の入学式の日だったわね」


初めて見たその瞬間から、健ちゃんのお母さんは彼女の虜になってしまったのだそうだ。


「知り合った時、美雪はすでに聴覚障害者だった」


ひとつ、またひとつ。


次々に友達のグループが出来上がっていく賑やかな教室で、美雪だけがひとりぼっちだった。


「でもね」


と、健ちゃんのお母さんは瞳を輝かせながら、手のひらを返す手話をした。


「でも、ひとりぼっちなのに、ぜんぜん寂しそうじゃなかった。寂しいというより」