恋時雨~恋、ときどき、涙~

尋常ではないほど目をぎょっとさせて、順也を見つめていた。


その異様なまでの食いつき方に、わたしは不思議な違和感を覚えた。


「はい。交通事故で」


と順也が肩をすくめる。


「ぼくには大切な人がいるのですが。彼女を守るためには仕方なかったことで」


でも、ぼくは彼女を守れたので後悔はしていないんです。


そう答えた順也を、


「そう……そうなの」


と見つめるその目は、なんとも言葉にできないほど切ないものに見えた。


いや。


切ないというより。


悲しい昔を懐かしむような、遠い目だった。


健ちゃんのお母さんが言っていた、聴覚障害を持つ友。


それは、健ちゃんのお母さんの親友だった。


順也や静奈に負けないほど上手な手話で、そう教えてくれた。


「私の親友の名前よ」


健ちゃんのお母さんは、紙にインクを走らせた。


岡本 美雪
おかもと みゆき


「み、ゆき」


きれいな人差し指が、美、雪、と順番になぞる。


「美雪は、名前のように本当に美しくて、雪みたいに儚い女の子だったの」


小柄で、華奢で。


真っ白で透明な肌。