恋時雨~恋、ときどき、涙~

「友達に、聴覚障害を持った子がいたの」












わたしと健ちゃんのお母さんは、リビングで向かい合った。


健ちゃんのお母さんは、なんだか緊張している様子だった。


窓の外は、まだ明るい。


日が長くなった。


もうすぐ、夏が来る。


空の袂が、鮮やかな朱色に染まっていた。


順也が膝の上にトレーを乗せて、ゆっくりと車椅子でやってきた。


「失礼します」


テーブルにコースターを並べて、


「どうぞ」


とアイスティーのグラスを置いた順也を見て、健ちゃんのお母さんが訊いてきた。


「この方は?」


〈わたしの、幼なじみです〉


順也がぺこりと頭を下げる。


「笹森順也です」


「順也さん」


「ええ。健太さんには本当に仲良くして頂いていて」


順也が微笑むと、健ちゃんのお母さんは車椅子を見つめた。


「順也さん、あの……」


「はい?」


「失礼かもしれないけど。全く歩けないの?」


「ああ、はい」


順也はにっこり笑った。


「事故に合ってしまって」


「事故?」


健ちゃんのお母さんが表情を一変させた。


「事故って、交通事故?」