恋時雨~恋、ときどき、涙~

「いよいよ、明日だね」


モンブランケーキを食べながら、順也は嬉しそうに両手を動かした。


「健太さんの退院。良かったね」


わたしは頷いて、モンブランケーキにフォークを刺した順也の顔を扇いだ。


〈順也〉


順也は昔から、独特の雰囲気を持っている。


そこにいるだけで、優しい気持ちになる。


順也になら、全部言えるような気がした。


健ちゃんとの交際を、反対されていること。


静奈に八つ当たりしてしまったこと。


お母さんから届いた手紙のことも。


「なに? どうしたの?」


なぜだろう。


不思議だけど、順也を前にすると、心の中のものを全部吐き出してしまいたくなる。


昔からだ。


順也は、何か不思議な魔法を持っているのかもしれない。


〈相談が〉


ある、と言いかけて、わたしは手話をとめた。


天井のランプがくるくる回って点滅したからだ。


わたしと順也は顔を見合わせた。


誰だろう。


〈ちょっと待ってて〉


立ち上がり、わたしは玄関へ向かった。


ランプのスイッチを切る。


覗き穴を確認して、わたしは息を止めた。