恋時雨~恋、ときどき、涙~

くさい!


〈健ちゃん!〉


乱暴に指差すと、やっぱり健ちゃんはあっけらかんとして、わはははと笑った。


「おなら爆弾だんけー」


くさい!


くさい、くさい!


手術後の経過は、大絶好調のようだ。


おなら爆弾を連発する、健ちゃん。


大きな口を開けて、スーツをしわくちゃにして笑う、亘さん。


窓の外に広がる、初夏の五月晴れ。


なんだか、少しだけ、気が楽になった。


ほんのちょっとだけ、ばかばかしくなった。


いろんな事に悩んで常に苛立っている自分が、ものすごくバカみたいに思えた。


わたし、何を焦っているんだろう。


何があっても、この人だけは信じるって誓ったのに。


「亘、おれな」


「何だよ、おなら大魔王め」


なにー、と健ちゃんが右手を振り上げる。


無邪気に、亘さんが笑っていた。


もう少し。


あと少しだけ、このままでいいよね。


じゃれあうふたりを見つめながら、わたしは鞄をそっと抱きしめた。


焦ることは、ないよね。