恋時雨~恋、ときどき、涙~

疑心の目を向けて来る健ちゃんに、亘さんはがっくりと肩を落とした。


「入院して、頭固くなっちゃったんじゃないのか?」


呆れたとでも言いたげに、亘さんは笑いながらパイプ椅子に座った。


「親友の彼女に手出したりしないよ」


バカだなあ、そう言って、亘さんはネクタイを緩めた。


健ちゃんが、横目でわたしを睨む。


「いいか、真央」


〈なに?〉


なんだか、気が抜ける。


今日の健ちゃんは、子供みたいだ。


「おれが入院してるのをいいことに、浮気なんかしてみろ」


アヒルのように唇を尖らせて、健ちゃんはぶっきらぼうに両手を動かした。


〈どうするの?〉


わたしが悪戯に訊くと、


「浮気なんかしたら、こうだ!」


そう言って「うっ」と力んだ。


……?


わたしと亘さんは顔を見合わせて、同時に首を傾げた。


「あっ!」


その瞬間、亘さんは飛び跳ねるようにパイプ椅子を立って、後ずさりした。


健ちゃんが白い歯を見せて、ニタリと笑う。


「プー、だ!」


そう言って、健ちゃんは掛けていた毛布をばふばふさせた。





わたしはとっさに鼻を摘んだ。


健ちゃんを睨む。