恋時雨~恋、ときどき、涙~

ごめんなさい。


ごめんなさい。


何の役にも立てなくて、ごめんなさい。


耳が聴こえなくて……ごめんなさい。


「真央さん」


健ちゃんのお母さんが、わたしの手を強く握った。


「こんなことは、言いたくないけど」


その唇を読んで、わたしは言葉を失った。


「これで、よく分かったでしょう?」


あなたと健太が、交際するということは。


あなたと健太が、一緒に暮らすということは。


「こういうことなのよ」


こういう、こと……。


わたしは、そっと息を呑んだ。


「盲腸で済んだから良かったけど。もし、これが、命に関わるようなことだったとしたら」


動けなかった。


「健太に何かあった時、あなたに何ができるの?」


わたしは、絶望した。


突然、ハッとした顔をして健ちゃんのお母さんが立ち上がった。


手術室の扉が開き、ストレッチャーが出てくる。


健ちゃんの手術が終わったらしい。


でも、わたしはソファに沈んだまま動くことができなかった。


隣で、静奈が呆然と立ち尽くしていた。